top of page
  • 執筆者の写真Hirofumi Inoue

行政評価を使いこなそう 市民や市職員、議員、首長の共通の道具 2021年9月定例会の一般質問から


▽まとめ

・唐津市にとっての行政評価の目的は、予算や組織の見直しに活用すること。ただ、2008年度に本格導入した行政評価は、総合計画の施策の進行管理に利用することが主となり、骨抜きになっているのが実情だった。そこで危機感を募らせた一部の職員が一念発起し、19年度を基準に、補助金見直しで行政評価を重視した結果、7300万円の削減効果を生み出した。組織の見直しについても同様だが、外部委員の評価を受けて公共施設再編を進める専門部署を設けることができた。しかし、私井上の意見としてはまだまだ不十分。


事業の実施結果の分析が事業の見直しを行う際にうまく生かされていない点が数多くあるため「予算編成の改善は一番重要」(唐津市財政部)だ。本物の行政評価の4条件は①住民ニーズをくみ上げること、②結果は極力公表すること、③予算に反映させること、④徹底した顧客志向―(いずれも上山伸一氏の「『行政評価の時代-経営と顧客の視点から』より抜粋)であり、私井上は抜本的な改善を求めたい考え。


・峰達郎市長は「第2次唐津市総合計画に掲げている将来都市像実現のため、施策が着実に推進されているかどうか、成果が出ているのか、そして、規模縮小や廃止すべき事業がないかなど、これまでも公正・公平な行政評価のチェック機能を高めてきた。行政評価の手法や評価項目について整理をし、市政運営に当たっていかなければならない」と見直しの意向を示した。







                              【読了時間23分程度】


【井上】

 私は今回、行政評価の在り方という1項目のみ質問します。

 質問の趣旨は、行政評価を市職員、議員、市民、首長の共通の道具として使いましょうということです。

 質問の目的は、大きく2つあります。1つは、行政評価に基づいた行政運営の効率化をはじめ成果の向上、財政再建、顧客志向の転換などに対する市の姿勢を確認し、もし改善点があれば改善を促すことです。

 もう一つは、行政評価という道具を使って、やらなくてもいい事業や業務を見極めようということです。仕事が増えるばかりで減らないと複数の職員さんから聞いたことが質問のきっかけでした。

 私自身を振り返れば、職員さんに対しては、議員として、「あれをしてこれをして」とお願いすることが多いです。自戒を込めて、あの仕事はやらなくてもいいんだという視点が重要だと考え直しています。なぜなら、新しいことを始めるときには、何かをやらなかったり諦めたりすることが大切だからです。

 まず、行政評価とは何かという点と全国の現状と課題について説明します。

 東洋経済新報社の行政評価ハンドブックは、行政評価を「行政機関の活動を何らかの統一的な視点と手段によって客観的に評価し、その評価結果を行政運営に反映させること」と定義しています。

 日本では、地方自治体の財政悪化と行政不信への対応、地方分権、行財政改革が求められていたことなどを背景として、1990年代から広がり、2014年(平成26年)3月に発表された総務省の調査結果では、市と区で8割強、町村で3割台と唐津市を含めた市と区では、ほぼ行政評価を行っています。ただ、評価それ自体が目的となっていたり、利用できていなかったり、職員の負担感が大きかったりと様々な課題が浮かび上がっています。

 最初の質問です。唐津市が行政評価を導入した経緯と目的をお答えください。

 これで1回目の質問を終わります。

【堀田信・政策部長】 

 行政評価は、市町村合併後、平成17年度に行政改革大綱が策定されたことを契機とし、選択と集中の原則に立ち、本市の行政サービスの効果的かつ効率的な推進を図るため、コスト、負担、目的、効果、必要性などの観点から、平成18年度から試行的に実施し、平成20年度からは、市が行っている様々な施策について、その目標に対して効果や成果を上げているか、無駄や不足している部分がないかなど、問題点や課題を整理しながら改善していくために本格実施しているところでございます。

 平成27年度からの行政評価につきましては、第2次唐津市総合計画の基本計画の基本構想に掲げました若者や子供の定住促進、交流人口増加、行政改革の推進などの本市の課題を解決するため、選択と集中を図りながら、施策展開すべく、基本目標単位に優先すべき主要な施策を体系化した各施策の進行管理のための手段として位置づけるとともに、基本計画に定める基礎数値目標達成度を評価・分析した結果等を踏まえ、予算や組織の見直しに活用するために実施しているものでございます。

 以上でございます。


【井上】

行政評価の目的は、予算や組織の見直しに活用するという答弁です。今回の質問全体の肝になる部分なので強調しますが、唐津市にとっての行政評価の目的は、予算と組織の見直しへの活用です。これは私が考えた目的ではなく、市が考えた目的です。そして、行政評価は総合計画の施策の進行管理のための手段として位置づけているという答弁でした。それでは、予算や組織の見直しという目的を達成できているのかについて、もしくは達成できたのかについてご説明ください。


【堀田部長】

 平成27年度からの行政評価につきましては、対象を事務事業から単位施策に変更し、体系的な評価を図っております。毎年の評価を実施する中で、PDCAマネジメントを行い、目標に向け改善を行っているところでございます。

 予算見直しへの活用につきましては、令和元年度より政策部と財務部との共同で行政評価の中で補助金のヒアリング評価を実施し、補助率の基準・整理を行っておりまして、令和元年度を基準に見直し対象とした補助金は、一般会計当初予算ベースで申し上げますと、予算事業数で138事業、予算額では約23億1500万円分でございます。実際の作業に際しましては、これらの補助メニューや補助対象者などで332件に区分けし、見直しを実施したところでございます。

 この見直しを踏まえ、令和2年度の予算編成を行いました結果、目的達成や終期到来などによる廃止が17件、補助率や対象経費の見直しなどによる縮小、改善が42件、従前のままの継続が273件となっております。

 ただし、廃止17件のうち8件は、単年度の施設整備補助金であることや、補助対象がなくなったなど必然に基づく廃止でございまして、それらを除いた補助金の廃止及び縮小、改善の実質的な効果は約7300万円と捉えております。

 なお、従前どおり継続となった273件のうち、見直し方針に完全に適合しているものは56件程度で、団体運営補助から事業補助への転換や定額補助から定率補助への移行、補助率の改定などについて、引き続き調整が必要と考えておるとこでございます。

 次に、組織の見直しについてでございますが、唐津市行政改革推進会議において、外部委員の方々に評価を頂いております。外部委員の導入により、評価の客観性・公平性の確保や専門知識の活用、住民ニーズの把握が可能となり、住民目線に立った行政サービスの向上につながる組織の構築に向けての意見を頂いた結果、公共施設の再編推進の提案が数多く寄せられたこともございまして、本年度より公共施設再編を進める専門部署を設置いたしたところでございます。

 以上でございます。


【井上】

 今の答弁をまとめます。行政評価を2008(平成20)年度から本格実施したが、目的を見失って形骸化し、目的の観点からは評価のための評価に陥って、10年以上にわたり目立った実績は全くなかった。しかし、危機感を募らせた一部の職員が一念発起し、2019(令和元)年度を基準に、補助金見直しで行政評価を重視した結果、7300万円の削減効果を生み出した。組織の見直しについても同様だが、外部委員の評価として、公共施設再編を進める専門部署を設けることができたということです。

 一度形骸化した行政評価を生き返らせようとした職員の功績は非常に大きいです。ただ、予算や組織の見直しに利用するという目的は達成できたのかという問いに対しては、10年以上目的を果たせなかったものの、2年ほど前から目的の実現を目指して、もう一度頑張っていますという回答になるでしょう。

 次の質問です。ここで一度、唐津市の行政評価の概要について確認させてください。


【堀田部長】

 評価の対象は、第2次唐津市総合計画の基本計画における単位施策である106項目が対象となっております。評価は、各所管による1次評価と外部委員による2次評価で構成しております。1次評価は、単位施策の実施所管課が、年度別の数値目標、実績、施策の取り組み状況等を行政評価調書に記載し、数値目標達成度の把握、単位施策推進に当たっての課題の整理、単位施策を構成する各事業の次年度の方針確認、達成率が低い施策については、その理由の分析を行っているところでございます。

 これらの結果を2次評価といたしまして、民間委員6名の方からなる唐津市行政改革推進会議に諮り、意見を頂いております。行政評価の結果につきましては、市長に報告し、市のホームページで市民の皆様にも公表しているところでございます。

 以上でございます。





【井上】

概要は分かりました。では、長年にわたってなぜ利用ができていなかったのか。今後利用を進めるためにはどうしたらいいのかを考えたいと思います。

 ある専門家は、本物の行政評価の4条件として、1つ、住民ニーズをくみ上げること、2つ、結果は極力公表すること、3、予算に反映させること、4、徹底した顧客志向と上げています。この4条件を念頭に置きながら、実際に唐津市の行政評価を見ていきましょう。

 直近の令和元年度行政評価ヒアリング結果を用います。第2次総合計画に従って基本目標が6項目、その下に基本施策28項目、さらにその下に単位施策が106項目あります。例えば基本目標に、快適な生活と安全・安心なまちづくり、その下の基本施策に、自然と調和する快適な生活環境の保全、さらにその下に、ごみの減量化及び再資源化などの4つの単位施策があるという形です。

 ごみの減量化及び再資源化という施策では、ごみ排出量3万4286トンという目標値に対し、実際は3万9,598トンで、目標の87%の達成度、資源物集団回収量で目標値の615トンに対し389トンで達成度63%。この施策では87%と63%の単純平均で75%の達成度としています。

 不法投棄対策では、不法投棄防止活動協力団体の目標数16団体に対し、実際は11団体で達成度69%。一般廃棄物処理施設の整備では、指標自体を設けていません。

 生活環境の向上と環境保全に対する市民の意識向上では、唐津市うみ・やま・かわ環境調和のまちづくり補助金事業の交付数を採用し、目標値26団体に対し、実際は27団体で達成率が104%。この施策4項目を構成する事業数が、それぞれ拡充や現状維持、廃止、完了に至るまで、次年度の方針ごとに分類されています。

 この基本施策では、計12事業のうち、完了が1、残りは全て現状維持もしくは拡充です。同様に106項目の達成度をまとめたものが、令和元年度で103%でした。以上が1つの例でした。

 現状の枠組み内で予算と組織の見直しにつなげられる改善点を3点上げます。

 1つ目に、目的と手段をもう一度明確にすることです。現状では、予算や組織の見直しという本来の目的よりも、総合計画の進行管理という手段が目的となっています。

 2つ目に、政策、施策を評価対象にする場合、できるのは予算配分を変えたり、政策を転換したりすることですので、あくまで施策ごとの予算のめり張りをつけるためのものだと割り切ることが重要です。そもそも総合計画に掲げた施策は、どれも重要なものでしょう。したがって、その施策を構成する事業の縮小や廃止という判断を現場だけで判断するのが難しいことは容易に想像できます。

 3つ目に指標の見直しです。これについても先ほどの例を用います。例えば私なら、ごみの排出量と資源物回収量を唐津市の人口約12万人で割ります。そうすれば、市民1人当たりのごみ排出量と資源物回収量になります。同様に、全国で人口や産業構造が似ている市も、市民1人当たりの単位にそろえることで同じような比較ができるでしょう。市全体で約3万4,000トンのごみの量を市民1人当たり年間約320キロと示せば、市民にとっても分かりやすく、さらに数値を減らす意欲が湧くかもしれません。

 不法投棄対策は不法投棄防止活動協力団体の数が指標でしたが、産業廃棄物の不法投棄を見つけた件数や、できればその推定量にします。このほうが成果として市民に分かりやすく身近だからです。

 一般廃棄物処理施設の整備は省略します。

 この例だけではなく、施策には成果だけではなく、施設を整備したい数を目標値、整備した数を実際の数値としている項目が多く、事業ありきです。進行管理の意味が強いため、「これだけやりました」、「できました」というのが指標の多くを占めています。中には庁内の会議の数や事業の数そのものを指標に用いています。厳しい言い方をすれば、施策や事業の中身ではなく、それをしたことが評価されるという一面があります。決して会議の数が成果ではありません。

 一方、例えば消防設備等の整備でという項目で、火災の死亡者や負傷者をゼロとする目標値を用いたことはすばらしいです。これをやりましたという単なるアウトプットから、その先にもたらされる成果を重視しています。さらに初期・中期・最終と分けて考えるのが望ましいと思います。火災の死亡者や負傷者は、ゼロは最終成果に当たります。

 今の進行管理表となっている行政評価では、施策の中にある事業の達成度がメインになっていて、代わりに私が市の職員で、この事業は意味がないかもしれないと思っているのに、やれば100%、やらなければゼロ%です。達成できなければ、再度、行政評価調書を書いて担当課に提出しなければなりません。「やんなくてもいいのにな」と思っていても、職員の立場として事業を進めてしまうでしょう。それではいけません。

 市民の意識向上という施策では、補助金交付数ではなく、実際に清掃活動や環境保全を行った団体数や参加者数、その数値の把握が難しいならば、年に一回の市民モニター調査や大規模な市民意識調査の際にボランティアに参加しようと思うかといった人の割合で判断することもできます。

 結果的に、この補助金の一部は見直されましたが、今の指標ではなかなか判断することはできません。総合計画の進行管理表であれば、コストに関する指標は今のように必要ありませんが、行政評価にはコストの視点が不可欠です。コストをはかる指標として、例えば、ごみの排出量や資源回収量を分母、携わった人の数や時間を基にして人件費や外部業者に委託した費用を含めたコストなどを分子にして、1トン当たりのコストを算出する方法もあると思います。

 最後に、総合計画の進行管理ではなく、目指すべき都市像の実現を考えると、例えば総合計画の基本構想にある定住促進なら、新しく会社ができた数や市民1人当たりの平均所得額の全国市町村ランキングを入れてもいいです。行政評価の市民への広報は、ホームページの公開にとどまっています。興味がない市民なら、まず目に入れません。市の広報紙やSNSなど、別のアプローチも検討すべきです。

 次の質問です。唐津市は、行政事務や行政サービス等の改革に関して、基本的な考え方を示し、実効のある具体的な取り組みを整理し、目標を掲げて、短期集中的に実践していくための実行計画「唐津市行政マネジメントアクションプラン」というものを2016(平成28)年度から、2019(平成31)年度を対象期間として策定しました。行政評価に関して具体的な取り組み内容として、組織編成に行政評価を活用すると書いてあります。加えて、行政評価の効果的・効率的な運用を上げています。これらの取り組みは実現できたのでしょうか、お示しください。


【堀田部長】

 議員よりご説明がございました唐津市行政マネジメントアクションプランにおいては、具体的には、中期的な観点から組織機構の見直しに行政評価を活用するほか、見える化により数値目標の達成状況や他市との比較分析を行い、市の弱み、強みを明らかにするとともに、行政評価の実施方法等を検証し、行政評価の簡素化と評価結果の有効活用に向けた検討を行うこととしておりました。

 しかしながら、行政評価を総合計画に掲げる単位施策の進行管理の手段として位置づけておりまして、組織の見直しや他市との比較分析ができておりませんでした。今後は、行政評価の手法を整理し、数値で客観的に達成状況を示すことができる、行政評価の仕組みづくりを検討していかなければならないと考えておるところでございます。

 以上でございます。


【井上】

 休憩前の答弁は、行政改革を進める実行計画で、行政評価を利用した組織の見直しやコストの比較ができていなかったという内容でした。見える化の取り組みについては、4年間の計画対象期間で、レーダーチャートという図表で分かりやすく伝えようとする努力の跡が見られています。私のほうで補足させてください。

 できなかったとされる他市との比較ですが、6月の定例会で、岡部高広議員が全国の類似団体の財政指標を用いて、将来負担比率が22団体中19番目に悪かったことなどを、総務省が公開した資料を基にご自身で表計算ソフト「エクセル」を使って明らかにしました。岡部議員の作業は数時間程度でしょうか。こうした指標を一つの現行の指標と一部入れ替えればいいだけのことだと思います。市民にはもちろん、職員、議員、首長にも分かりやすい指標であり、分析にも役立ちます。

 組織の見直しについても、対象期間後になるものの、外部委員の意見を基に、公共施設再編部署の開設につなげることができた点は評価しています。行政評価を道具としてもっと利用するためには、行政評価自体の改善も必要です。

 次の質問に移ります。

 唐津市の行政評価の2次評価に携わる外部委員は、これまで市民への積極広報や継続的な改善要求など、数々の意見を表明しています。直近の昨年3月開催の会議概要には、特に事業の見直しに関して、「事業の切り捨て作業をどこかが憎まれ役となって進めたほうがいいのではないか」とか、「課題のままで、切るべきところがあるにもかかわらず、新規事業が増えているので予算が膨らんでいる」といった厳しい意見が大半を占めております。質問冒頭の複数の市の職員と似たような意見です。これまでのこうした意見への対応についてお示しください。


【堀田部長】

 平成29年6月総務省自治行政局発表の地方公共団体における行政評価の取り組み状況等に関する調査結果において、全国の約7割の自治体が、行政評価の予算編成等への活用について課題があると報告されておりまして、本市におきましても、行政評価の結果を事業の削減、縮小、廃止を考慮した予算編成につなげることに苦慮している状況でございます。委員から頂いた意見を市政運営に反映させることも、まだまだ十分とは言えない状況でございます。

 しかしながら、そうした中、公共施設再編の必要性についても多くの意見を頂き、本年7月より、新たに公共施設の再編を推進していくための公共施設再編推進課を設置いたしました。現在は、各部、各市民センターに対しヒアリングを実施し、各所管施設の現状把握を行うことで長期的な視点を持って、施設の更新、統廃合、長寿命化などを計画的に行うための基本的な考え方を示す公共施設等総合管理計画の改定に向けて作業を進めているところでございます。

 以上でございます。


【井上】

 正しい意見を市政運営に反映させることまでが行政評価です。事業の見直しに関しては、昨年3月の会議前も複数回指摘してあります。行政評価を生かそうとする機運が唐津市としても近年高まっている中、積極的に意見を取り入れたり、反映させたり、意見を採用しない場合も、なぜ採用しなかったのを説明したりする必要があります。

 私としては、事業の見直しに憎まれ役は必要ないと考えます。なぜなら、本当の行政評価ができれば、市民や議員、市職員、市長が客観的なデータでそれぞれ判断したり、その判断を尊重したりできるからです。

 次の質問です。

 課題である予算編成への利用に必要なことを財務部の観点でお話しください。


【草野陽・財務部長】

 財務部の視点でのお答えということで、お答えさせていただきます。

 予算編成に際しましては、各部より行政評価の過程で行う事業の振り返りと分析・評価を踏まえ、所要の見直しを行った上で予算要求が行われているところでございまして、事業の課題整理と調整といった点では、行政評価の一部は予算編成に反映されているものと捉えております。

 しかしながら、予算査定を通じて感じておりますのは、事業の実施結果の分析等が、事業の見直しを行う際にうまく生かされていない点が数多くあるといった部分でございます。予算編成の上で、この点の改善は一番に重要だと考えているところでございます。

 また、本市の行政評価の目的でございます評価結果を経営資源の見直しに用いる、すなわち全体の予算配分を見直す、あるいは事業を縮小、廃止するという点で申し上げますと、行政評価の結果がうまく反映できていないという点もございます。

 行政評価を生かした予算編成といたしましては、事業の現場を知る各部が、配分された一般財源の枠内で、各部の判断で事業の取捨選択を行う枠配分方式というものがございまして、これまで財務といたしましても検討してきたところでございます。

 しかしながら、採用した自治体が、旧来の一件査定方式に戻る例もあることなどから、現状では導入に至っていないところでございます。

 行政評価等を踏まえ、改善すべき点、導入すべき点を整理し、政策部と協議の上、よりよい予算編成方式となるよう進めてまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。


【井上】

各部の事業結果の検証と事業の見直しが不十分という指摘を踏まえて、行政評価自体を改善する必要性と、行政評価の利用ができていない状況というものがよく分かりました。

 枠配分予算だけではなく、財務部と事業部門が対等な立場で予算編成を行う包括予算方式や、行政評価の結果を速やかに予算編成に反映させる事中評価なども検討の余地はあると思います。

 次に移ります。

 予算の見直しに利用するために必要なことを説明してください。


【堀田部長】

 行政評価につきましては、総合計画に掲げた単位施策の進行管理のための手段として位置づけるとともに、予算や組織の見直しに活用することといたしております。

 しかしながら、先ほど申しました行政改革推進会議で頂いた意見を基に、公共施設再編を進める専門部署を立ち上げた事例はございますけれども、現状といたしましては、行政評価の結果を基に組織の見直しに十分活用することまでは至っていないというのが現状でございます。

 以上でございます。


【井上】

 先ほどは失礼しました。行政評価を組織の見直しに利用するために何をすればいいのかという質問であり、できていないのならどうすればいいのかという意図でした。私は、行政評価に成果に関する指標を増やし、各部や担当課が生み出している成果を把握するのが一つの方法だと考えております。

 私が、6月定例会で、市の職員数をテーマに一般質問をした際、総務省の公開資料を基に唐津市と人口や産業構造が似ている22の市を対象に、──唐津市を含めてです、昨年4月1日現在で、前年度からの部門別の増減表を作成しました。6月では発表することはできませんでしたが、一部を紹介すると、22市合計で、企画開発が22人、防災が14人増えている一方、市民センター等施設が9人減とおおよその傾向が分かります。

 使えそうな統計やデータは転がっています。一方、それらを行政評価にどうやって組み込むかについて、私も明確な解決策は持っておりません。行政評価を組織の見直しに利用するために何が必要なのか、私も考えたいと思います。

 次は、事務事業を対象とした評価の在り方です。

 一般的に政策体系は、政策、施策、事務事業という構造になっており、事務事業の数は市町村で数百から2000未満、1,000台と言われております。政策、施策の評価は、予算のメリハリや政策転換が適しています。

 他方、業務改善や課題となっている事業の見直しに関しては、事務事業を対象とした評価が適しています。

 唐津市でも、これまでごく一部の事業が外部による2次評価を受けていましたが、圧倒的に少ないのが実情です。今の行政評価では、事実上277の事業しかチェックできていません。新規事業が増えているという声は、市役所の内外から聞こえてきましたが、実際にどれだけ事業があって、どれだけ事業が増えているのかというのは、この場にいるほとんど誰も把握できていないという点が恐ろしい点です。恐らく1,000を越えるであろう事業数のうち、ごく一部です。したがって、事務事業の評価も不可欠だと考えております。

 事務事業の評価に関連する具体的な手法の一つとして、業務棚卸しが挙げられます。業務棚卸しは、定型的な業務やほかの自治体で民間委託されているような業務を一覧化し、民間委託できる分野やRPA、ソフトウエアロボットによる業務自動化のことですが、適用できる部分を洗い出します。

 市が、2019年度に佐賀銀行とRPAの導入効果実証実験に乗り出し、5業務で年間45%の業務時間の効率化を図っています。職員を多過ぎる業務から解放するためにも、RPAはぜひ進めるべきです。

 そこで、次の質問ですが、RPAの前提となる業務棚卸しの導入について、市の考えをお聞かせください。


【堀田部長】

 議員ご提案の業務棚卸しに向けて、今年8月よりDX推進支援業務に取り組んでいるところでございます。現在は、職員にアンケートを実施し、働き方診断及び各課が抱える課題の可視化を図っております。

 また、今後は、本市にどのようなAIやRPAを導入し、効率化を図れるかを検討するため、業務ヒアリングの実施や業務の流れ、改善が必要な箇所を見える形にするための業務フローの作成につきましても委託しておりますので、進めてまいりたいと思っております。

 さらには、見える化された業務フローを基に、事務の見直し提案、デジタル化の導入提案を行っていただき、併せて導入に当たっての技術的なサポートを受ける予定でございます。

 以上でございます。


【井上】

 いい仕事をするためにも、業務を減らしたり改善したりしてほしいと強く求めます。

 行政評価の利用には、市長のリーダーシップが欠かせません。唐津市の行政評価は、10年以上予算と事業の見直しという点で実績がほぼありませんでしたが、行政評価を利用しなければならないという動きが、この2年ほどで活発になりつつあります。

 市長は、「行政経費削減のため、RPAなど先進技術の導入を進めていき、唐津が未来へ続く基礎を確立します」とマニフェストに掲げていらっしゃいました。その前提には、事務事業の全体の把握や見直しがあり、棚卸し制度の導入や事務事業単位での評価が、こういったものが必要ではないでしょうか。行政評価をどう利活用するのかという考えと併せて答弁を求めます。


【峰達郎・市長】

 井上議員の再質問にお答えいたします。

 行政評価は、評価することが目的ではなく、評価することを通じて予算や組織の見直しに活用するとともに、行政の仕事を市民本位に変えていき、よりよくしていくことが目的だと考えております。

 従来、行政の仕事は、利益で評価できる民間企業と異なり、評価が難しいとされてきました。しかしながら、人口減少社会に突入し、歳入が伸び悩む中で、新たな行政課題や多様化した住民ニーズに対応するためには、限られた人材と財源をより有効な事業に充てていく必要がございます。

 そのような中で、第2次唐津市総合計画に掲げております将来都市像実現のため、掲げられている施策が着実に推進されているかどうか、成果が出ているのか、そして、規模縮小や廃止すべき事業がないかなど、これまでも公正・公平な行政評価のチェック機能を高めてきたところでございます。

 今後も、議員のご提案の件も含め、行政評価の手法や評価項目について整理をし、市政運営に当たっていかなければならないと考えているところでございます。

 以上です。


【井上】 

あくまで総合計画の進行管理を主な目的とするならば、今の唐津市の行政評価は、本当の意味での行政評価とは違ったものです。

 ただ、総合計画の進行管理をはじめ、各施策やそれを構成する事業の課題の把握、事業の調整としての意義は、今の行政評価でも一定程度はあります。本当の意味での行政評価にして、市民や議員、市職員、市長に至るまで、多くの人が使える道具にしていくべきです。

 本格的に行政評価を実施した2008(平成20)年度以降、市長の言葉を借りれば、公正・公平な行政評価のチェック機能を高められておらず、予算と事業の見直しという目的に照らせば、行政評価の活用以前の利用もままならない状態が長時間続いているという問題意識を持ったからこそ質問するに至ったことをご理解していただきたいと思います。

 今回の質問を通して、この2年間ほどで本当の行政評価としてようやく動き出したということを実感しました。この流れを止めないでほしいと願います。職員の皆さんが、必要性の低い事業や多過ぎる業務に手を患わされることがなくなれば、もっといい仕事ができますし、いい唐津になるでしょう。そのことを最後にお伝えして、一般質問を終わります。


【終わりに】

 2021年の9月定例会の一般質問は行政評価だけでした。相当なボリュームになってしまいました。あ、バイトの時間だ。それではまた。

閲覧数:77回0件のコメント
bottom of page