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  • 執筆者の写真Hirofumi Inoue

お役所言葉やめませんか? 2021年12月定例会一般質問から



【井上】

 今回の質問のテーマは多くの人にとって分かりやすい言葉を用いることです。

 この質問で一番言いたいことは、特に情報発信やコミュニケーションではお役所言葉をやめて、分かりやすい言葉を使おうということです。さらに言えば、言葉だけでなく、言葉以外の使い方や見せ方も工夫しようということです。

 ある調査会社の調べでは、新型コロナの情報を多く得ている情報源の割合は、テレビやインターネットがそれぞれ4割台に上る一方、自治体は1割未満にとどまりました。この調査を全面的に信用はできないものの、分かりにくい言葉や伝え方が住民に敬遠されたことが反映されたかも知れない調査結果として重視すべきです。

 以上、今回の趣旨がお役所言葉をやめて、伝え方も工夫しましょうということでした。ただし、私も今年2月に市議会議員になり、市民や議員、職員の皆さんから一般質問の際の早口を指摘されています。言葉を含めて使い方という点で偉そうなことを言える立場ではありません。また、私は今、所属する会派清風会で議会だよりのような配布物を同僚議員と作っています。その中で、同僚議員から文字が多い、もっと具体的に分かりやすくと注文され、内心は穏やかではありません。したがって、現場にいる皆さんと同じような立場だと思います。自分のことを棚に上げて感情や思いを口にすることが、この質問では多くなることをお許しください。

 最初に、役所が用いる言葉、伝え方が分かりにくいことで生まれる弊害をお示しください。

 以上、1回目の質問でした。


【政策部長】

 役所が使う分かりにくい言葉の弊害はということでございますが、市が作成する文書は誤りがないように、誤解がないようにと、表現を正確にするために専門用語を用いたり、行政特有の言い回しになっているものが多くございます。しかしながら、議員がおっしゃるように、その表現のために市民に理解されにくい場合があったり、回りくどい表現になってしまうことで、かえって誤解を招く場合があるということは認識しております。

 また、市民の方々は、堅苦しい、曖昧で回りくどいといった印象を持たれるのではないかと感じております。このような悪い印象は市民の皆様の市政に対する理解を妨げ、信頼を損なう一因にもなるのではないかと考えております。

 以上でございます。


【井上】

 1回目の答弁は、お役所言葉は市民に理解されにくかったり、誤解を招いたりするという内容でした。

 それでは、分かりやすい言葉を使う取り組みをしているのでしょうか。お答えください。


【政策部長】

 分かりやすい言葉を使うための取り組みといたしましては、市からの情報発信の際に、お役所言葉ではなく分かりやすい言葉を使うよう、職員に向けた広報の手引の中で紹介しております。

 特に市報の作成においては、毎月市報の原稿提出の通知の際に県が作成されましたいわゆる「お役所言葉改善の手引」を併せて紹介し、お役所言葉を使わないよう呼びかけております。実際の広報物については市政広報課で内容を確認し、分かりやすい言葉、説明になるよう修正を行っているところでございます。

 以上でございます。


【井上】

佐賀県が作った手引を紹介したり、担当課でチェックをしたりしているというご答弁でした。

 それでは、言葉と伝え方の具体例を、市民に身近な市報と市のホームページでそれぞれ検証します。事前に配った資料を用います。

 表紙が、全国の自治体広報紙のコンクールで昨年度の内閣総理大臣賞に輝いた神奈川県厚木市の最新の広報紙です。厚木市は表紙右上の項目から分かるように8ページと、唐津市の最新号の24ページの3分の1の分量です。地域の細やかな情報は圧倒的に唐津市が優れています。なぜ、厚木市が評価されるのでしょうか。私は、市民に分かりやすく伝えようという丁寧さや市民目線、その意識の有無、あるかないかだと考えます。それが分かるのが表紙の写真です。厚木市は、中央に被写体の子供を配置した、いわゆる日の丸の構図で、悪く言えば平凡です。しかし、子供の目線まで腰を落とさないと撮影できない写真です。温かい雰囲気と丁寧な印象を受けて、構図の内容としても期待が持てます。

 次のページをお開きください。

 次のページは、このページは唐津市の広報紙最新号です。水主町の鯱という素材がいいので迫力があり、唐津市の市報が優れているかもしれません。しかし、写真を見ると違和感があります。建物や電柱が左に傾き、写真で一番重要な鯱の尾の部分が中途半端に切れています。背景の傾きの修正や切り取り範囲の調整は数分でできるのにそれをしなかった、できなかった、気づかなかったという点で、丁寧な厚木市との意識の差が明確に出ている部分です。表紙で言いたいのは、意識の差です。逆に意識を変えれば、全国トップクラスの厚木市と表紙では大差なく、量では勝っているということは強調させてください。

 さらに、次のページに進んでください。

 実際に広報紙の内容に入ります。目玉企画の令和2年度決算状況です。ここで伝えたいのは丁寧に説明し過ぎるあまり、かえって分からないということです。

 歳出・歳入の内訳を示した円グラフがありますが、数百億円単位になると、分かりやすさを重視して1千万円以下は四捨五入か切捨て、億円単位で統一するべきだと思います。税金もあるので、正確、丁寧に1円単位や千円単位でできる限り詳しく明らかにすべきだという反論が考えられます。市報もその立場だとすると、その考えは尊重しなければいけません。ただ、どんなに重要な内容でも、読む気がうせて結果として市民に伝わらないということであれば、意味がないということは留意していただければと思います。

 さらに、次のページに進みます。

 先ほどは千円単位にそろえていましたが、一番上の棒グラフの単位は百万円です。億円に統一すると分かりやすくなります。また、元号をまたいでいるため、西暦に統一したほうがいいのは明白です。ページ中央のやや下にある公営企業会計決算の欄では、収益的収入及び支出が表の全体の行の部分を埋めているのが目につきます。表の外で説明すればいいだけです。それに、大半の市民は「及び、並びに」などは使い分けません。

 次は、唐津市のホームページを見てみます。次のページにお進みください。

 トップページにある、一番唐津市として伝えたいはずの新型コロナウイルス対策の部分を仮にクリックしたとします。そうすると次のページに飛びます。新型コロナウイルス感染症に関する情報についてのページです。「に関する、について」は、わざわざ記入する必要はありません。ないと考えます、私は。「新型コロナウイルス感染症関連情報」や、思い切って「新型コロナ情報」じゃ駄目なのでしょうか。こちらのほうがすっきりします。

 「〇〇について」という言葉は便利で、ホームページだけではなく、答弁やほかの公用文、公文書でも目にします。「〇〇について」という言葉は抽象的にならざるを得ません。例えば、「新型コロナ対策について」という言葉があれば、対策の情報なのか、対策の是非なのか、対策の検証なのか分からないものの、「新型コロナ対策について」で何となく通じるので厄介です。

 左端の青い部分を御覧ください。新型コロナ情報が記されたページであるのが大前提であるのに、例えば、上から6つ目の「新型コロナウイルス感染症に関する給付金などの相談窓口一覧」、これから下は同じように〇〇に関するという重複表現が非常に多いです。それぞれ、相談窓口一覧、サイト内リンク集、市長メッセージだけで通じるのではないでしょうか。読み手にとってはストレスです。

 あと、上から3つ目の「市内で開催されるイベント、行政サービスなどの中止・延期などのお知らせ」。「など」が2つ続いているというのはよくありません。市報でも「など」が連発していたというのはありましたが、「など」を減らす工夫をしていただきたいなと思っております。

 最後に、市民と実際にやり取りをするQ&Aの意見箱のページを見てみます。最後のページです。私が閲覧したときに最新の10月28日分のやり取りを紹介します。悪い意味で、市民の意見箱への回答が議会答弁と化しています。ページ中央の「お答えします」をそのまま「〇〇議員の質問にお答えいたします」とすれば、ほぼ議会の答弁です。

 提案内容は、アルピノに一時移転した曳山展示場のガラスが汚れていて山がよく見えないため、ガラスをきれいにしてほしいということです。回答の結論は、一読しただけではよく分かりません。回答部分の最初の2つの文では、いわゆる「させていただく症候群」の一種に陥ってる点や、これまで指摘した「〇〇について」が連発されています。さらに、役所で多く使われる「ところです」が出てきました。結局、清掃回数を増やすのかどうかという点が曖昧になっています。「清掃回数を増やそうと考えています」のほうがいいです。百歩譲って、お役所言葉に慣れている議員相手になら、まだいいと思いますが。それに、一部のいわゆるモンスタークレーマー対策としていんぎん無礼にやり過ごす、そういうことであれば、仕方のない部分があると思います。ただ、多くの市民にとっては不幸なことではないでしょうか。

 そして、唐津市のよい取り組みや職員の思いを込められた事業が市民に届かない可能性がある。そういう視点を踏まえると、市民にとっても、唐津市の職員にとっても、これは二重に不幸なことです。紹介した市報、ホームページ以外にもホームページにアップしてある各種の計画、SNSの動画、広報資料に至るまでお役所言葉や、一体何を伝えたいのか分からないことが多いです。

 例えば、動画配信サイトの唐津市公式チャンネルで、最新の定例記者会見を取り上げた動画のタイトルが「令和3年11月定例記者会見(令和3年11月24日開催)」です。今年11月の定例記者会見を今年11月24日に開いたことが、唐津市や峰市長が動画の視聴者に伝えたいことなのか、興味がない人に興味を持ってもらうためのタイトルなのか。これは、お役所言葉ではなく仕事の伝え方の一例です。

 そのほか、「〇〇したところです」の「ところ」や「ございます」、逆接の意味ではない「が」で一文を長くすること、「〇〇すること」の「こと」、「〇〇するもの」の「もの」や「つきまして、いたしまして」、「れる、られる」で受け身表現か敬語か、分からないこともあります。例えば、予算書の「備品の整備」の例でお分かりになったように、何でも整備したがるのは改善したほうがいいと私は考えます。備品の整備なんて、馬に乗馬すると言っているようなものです。これらの例は、ほんの一部です。

 たしか、9月定例会でも検討の使い方をめぐって江里議員が苦言を呈したほか、進藤議員や大西議員らがこれまで何度も言葉に関しては指摘されています。一時的に堀田政策部長とやり取りしているものの、今、議場に座っている皆さんや中継を見ている職員の方々に向けた提案ですが、みんなのためにももっと分かりやすい言葉を使いませんかということをお尋ねします。


【政策部長】

 市報でありますとか、ホームページを使って具体的な事例を用いまして、議員から先ほどご指摘、またご提案を頂いたところでございます。広報に関しまして、広く伝えるということで、制度などにより決まった表現を用いることになっているものはその方法として変更はできませんが、市民へのお知らせについては、先ほど申し上げましたように分かりやすい言葉、表現になるよう取り組んでいるところでございます。

 しかしながら、まだまだ十分ではないと認識いたしております。先ほど、井上議員からもご指摘を受けましたけれども、それ以外にも、例えば国からの通知に書かれた内容を市民の皆様へお知らせする際に、国の文書をそのまま使用しているようなケースもあるかと考えております。

 こうしたことを含めまして、今後も引き続き職員一人一人が問題意識を持って分かりやすい言葉、表現を心がけるよう周知してまいりたいと考えております。

 以上でございます。


【井上】

 十数年にわたり、訳あって全国各地の自治体や中央省庁を私なりに見てきました。そもそも、中央省庁もお役所言葉が多く、省庁から自治体への通達、通知も至極分かりづらいお役所言葉です。国会を眺めていても、改善は困難だということは私なりに理解できます。ただ、先ほどのご答弁の中で、決まった表現は変更できないなどとおっしゃったことも分かるように、かなり、これは意識の問題だというふうに思っております。

 部長がご紹介された県の手引は、たしか2004年、平成16年と、13年前に作られています。随分前です。今回のやり取りを通して、私は大げさではなく、国民の長期にわたる政治的無関心や行政不信、これを招いている原因の一つにお役所言葉、いわゆるお役所言葉があると考えております。次の項目に移る前に、この手引から目次を一部引用して紹介します。当たり前過ぎる内容なので、釈迦に説法の方には大変申し訳ないです。肯定的で前向きな表現を、まずは結論から、慣用語の見直しを、回りくどい表現はやめて、敬語表現は適切かつ簡潔に、以上です。

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